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2017/09/15 14:53
9/10、早稲田大学東伏見キャンパスで行われた「東アジア武術国際会議2017」にパネリストとして参加し「武道具マーケットの縮小とそのグローバルな再生プラン」というタイトルで10分程のお話をさせていただきました。
先行記事の
9/10(日)『東アジア武術国際会議2017』にパネリストとして参加します
https://www.suiyodo.jp/blog/2017/09/03/004407
もご覧ください。
武道の学会なんてあるんだ…!という方がほとんどだと思いますので、雰囲気をお伝えできるようレポートしたいと思います。
9/6〜9/8まで関西大学で開催された「第2回国際武道学会」との比較も交えながらお話していきましょう。
*壇上向かって左端が店主。
▼会場の様子
前々日まで関西大学で3日間、国際武道学会が開催されていたこともあり、参加者は延べ70人程度であったと思われます。
武道学会参加者が大学など教育機関に所属する研究者が主なのに対し、在野の研究者、一般武道家の比率が高かったことも特徴の一つでしょう。
武道学会では暗黙の了解として服装はフォーマルなスーツ。
和装やカジュアルな格好で参加すると目立ってしまいますね。
対して武術国際会議ではおよそ半数がカジュアルで、若い参加者も多かったです。
*今回の会場。東伏見駅を降りてすぐに早稲田大学のキャンパスがある。
*東アジア武術国際会議2017、会場の様子。
*関西大学で行われた日本武道学会シンポジウムの様子。
▼会議全体の空気
今回の会議のテーマは「武道における武術性(実用性)」です。
会議全体の内容を大変簡潔にまとめたサイトがありましたので、リンクを貼らせていただきます。
斬らなイカ?
http://nowsprinting-ma.hatenablog.com/entry/2017/09/13/015239
武道学会の方は武道の「道」すなわち精神性や哲学、倫理観の問題、競技としてのルールや動作、教育の問題が議論されることが多いのですが、武術会議の方は歴史的事実を押さえた上で、タテマエやしがらみを取っ払って武を「術」として考えた時にどうなのか、という方向性でお話がされていました。
真実や実践検証が疎まれる武道研究業界でこの方向性が選択されたということは大きなことであると思います。
▼「国際」とは?
「武術国際会議」「国際武道学会」と「国際」の名が冠されているように、外国人研究者が招待講演されました。
両会とも彼らの講演には大きな時間を割いていましたが、通訳なしの英語による発表であること、国内との意識、認識、文化の違いから内容に興味が持てないなどの理由で、会場の半数が寝落ちしてしまっていました。
武道学に限らずですが、海外学会誌>>>国内学会誌という価値付けであり、論文が掲載された時の評価レートは10分の1以下しかないそうです。
日本語での国内学会誌への投稿は評価されないことから、大学所属の武道研究者は英語での研究、海外への投稿を意識せざるを得ない状況であると言えるでしょう。
筆者は海外との武道交流に否定的な立場ではありませんが、対策の必要な環境であると感じました。
▼実証の場
武術会議の中で最も盛り上がりを見せたのが、中国武術、日本武術の演武の時間です。
八卦掌や形意拳、太極拳などの套路(中国武術の型)や、古武道の型などを本当に目の前で体感できる贅沢な時間であったと思います。
武道具の展示も解説、質問、活発な議論がその場でなされ、休憩時間が短縮されるほど熱い会場となりました。
*高無氏による二天一流の演武。
*大保木氏による武道具の展示。
▼パネルディスカッション
後半のパネルディスカッションでは、古武道セミナーを精力的に行っている若手武道家の高無氏によるセミナーレポート、SNSを媒体とした活動のメリットデメリットの報告、社会学者の池本氏による観光産業と武道の結びつきの事例報告が行われました。
前述の通り学会研究者は教育機関所属が主であり、剣道柔道など現代武道、競技の有段者でなければ武道の分野で大学就職はできない構造上一般の武道家が研究の場で壇上に上がり現場のお話をする機会は極めて少なく、大変珍しい光景でした。
*高無氏の発表。
学会ではパワーポイントが一般的ですが、Twitterによるアクティブな進向が内容ともあいまって印象的でした。
粋陽堂の発表内容は武道具製造業界の衰退を、木刀製作所を例にレポートしたものです。
(「学問」として成立するレベルの内容、調査、統計でないことにご注意ください。)
武道高段者、指導者、学会研究者、一般の武道家に到るまでこの衰退の事実を知らず、また関心がないということが第一の問題であり、私の役割は「この先武道がヤバい!!という危機感を武道業界に与えること」と割り切って発表しています。
これを機に武道具に関する議論が盛り上がることを期待致します。
*筆者による発表。
▼まとめ
この後の討論会、閉会後の懇親会も大いに議論が盛り上がっていました。
かなりはしょったレポートとなってしまいましたが、雰囲気が一部でも伝われば幸いです。
一般参加可能な会もありますので、足を運んでみてはいかがでしょう。
直近の粋陽堂が関わる学会イベントとしては、
『現代民俗学会 第39回研究会企画 戦う身体の民俗学』
日時:2017年9月30日(土)13:00 ~ 16:30
場所:埼玉県立歴史と民俗の博物館 講堂・講座室
URL : http://www.saitama-rekimin.spec.ed.jp/
があります。
詳細情報は↓
9/30(土)『現代民俗学会研究会』で展示のお知らせ
https://www.suiyodo.jp/blog/2017/09/03/004508
*この記事の内容には筆者の主観が大いに含まれます。是非自身で参加し体感してみてください。